全国各地のイベントを数多くプロデュースし、成功に導いてきた佐藤真一。自らを“バリュー・クリエイター(価値創造人)”と称する佐藤が手がけてきた地域活性事業は、これまでに1道2府25件100事業に及ぶ。
「地域を活性化するには、潜在的価値を発掘し、差別化をはかることが重要。地元では当たり前の風景や食べ物でも、そこにしかない価値がある。新しいものを創出するのではなく、いまあるものをいかに活用できるかが事業成功のカギになります。
この考え『地域のおすそわけこそ最大のおもてなし』と呼び、協力してくれる地元の人には、無理のない範囲でできることを、と提案しています」
佐藤は積極的に現場へ足を運び、打ち合わせや交流会を重ねる。事業をともにつくり上げる人材を発掘するためだ。「やる気をもって事業に取り組める本気の仲間を集め、やりたいこと、できることを徹底的に聞き取ります。そうして彼らとの目的や情報を
“共有”することが、事業に対しての“共感”を引き出し、事業を作り上げていく“共働”“共創”といったプロセスにつながっていくんです。論語の『近き者説(よろこ)び、遠き者来たる』という言葉通り、身近な人におもしろさは伝われば、人は必ず動き、
それが結果を生みます。まず何をやるかではなく、誰とやるか。だからこそ、世界観を共有できる人材集めに力を注いでいるのです」
そして、佐藤は住民たちの悩みや声に耳を傾けながら、地域にとって必要なものを見極め、事業というかたちに落とし込んでいく。事業にかかわる人間が増えていくにつれ、情報が氾濫し、互いの利害関係からトラブルが発生しやすくなる。
そんなときには、情報整理と利害一調整のプロフェッショナルである佐藤さんは、培ってきたファシリテーションスキルを活用する。行政と地域、あるいは参加者同士の間に立ち、双方の言い分を調整しながら問題を解決していくのだ。
また、佐藤が手掛ける事業はどれも一過性のものではなく、長期にわたって地域の活性化につながるものを目指しているという。行政指導ではじまった事業でも、地元の参加者の意識が変わることで、イベント終了後も自主的な継続が見込めるようになるのだとか。
「地域活性化には時間と労力、そして何より事業を楽しむ心の余裕が必要です」と話す佐藤の地域活性化術は、効率的ではないかもしれない。だが、一見遠回りにも見えるこの手法こそが、数々の事業を成功に導き、
地元の人々が自主的に挑む継続的な活動につながっている。